エス弁 | 〜多様な幸せ、生き方弁当〜

本当の女性活躍を目指して–スタッフ全員が時短勤務のママでも成果を出す–(谷平優美:株式会社ルバート)

株式会社ルバート(本社:千葉県船橋市 代表取締役:谷平優美)は、「女性が当たり前に活躍できる社会づくり」を掲げ、企業参画活動『ウーマンエンパワー』の主催をはじめ、子育て支援イベントやママ向けの再就職支援セミナーなどを行っています。スタッフ“全員”が子育て中のママであり、時短勤務やジョブシェアなどの働き方でも注目を集めています。
女性の活躍が活発に議論されるいま、株式会社ルバートの見据える先はただ「女性に優しい社会」とは違うようで――。代表・谷平優美さまにお話を聞かせていただきました。

本日はよろしくお願いいたします。はじめに、貴社の事業内容について少し詳しく教えていただけますか?

菅野
菅野
谷平
谷平

よろしくお願いします。
まず弊社は、リアルマーケティングの分野で、地域密着型の子育て支援イベントを開催しています。各地の商業施設などで行う『ママハピEXPO』は、累計75回以上開催・30万人以上を動員しています。このほか『主婦のお仕事フェア』などの雇用創出のイベントなども多く執り行っていますね。
また、『ウーマンエンパワー』の推進活動や、協賛企業の交流会、セミナーなども実施しています。最近は、文化的にも経済的にも、男女ともに長く働ける仕組みに注目する企業が増えているため、おかげさまで現在130社ほどの企業からご賛同をいただいています。

貴社はこのほかにも、さまざまな事業を行われているそうですね。計画中の事業にも、楽しそうなものが色々あるとお聞きしました。

菅野
菅野
谷平
谷平

月20万PVを超える『ママハピ』というウェブメディアの運営や、2万人ほどの会員に向けてのメルマガ配信、さらに女性向けの再就職支援セミナーや、子ども向けのプログラミング教室も開催しています。
今後は商品レビューや発信をしてもらう動画チャンネルやECサイトも計画しています。
また、子どもが気軽に旅行にいけないという声が多いので、「子連れでも羽を伸ばせる」民泊の準備も進めていますね。

面白そうですね! ちなみに、これらの事業の収益モデルについて、お聞きしてもよろしいですか?

菅野
菅野
谷平
谷平

弊社の事業は、基本的にB to Bです。イベントなども賛同・参加企業のブース出展費や広告費によって賄っており、一般参加者は無料なんです。プログラミング教室などは受講料がかかりますが、金額を抑えて気軽に受講できるようにしています。
日本は、将来を担う子どもと、そのお母さんを温かくみんなで見守る文化が弱いと感じています。
特に子どもが小さいうちは、家事・育児によって孤立してしまう人は珍しくない。だから、誰もが安心して情報を得られ、地域・他者と交流できる場を作りたいというのが、事業の根底にあります。

イベントの様子を拝見したのですが、参加者の方たちが皆どこかほっとしたような表情をしていて、とても印象的でした。

菅野
菅野

従業員全員が子育て中のママ

さて、貴社は従業員体制や雇用形態でも、かなり革新的なものを採用しているそうですね?

菅野
菅野
谷平
谷平

在籍している9名のうち、共同経営者の男性1名を除く全員が「子育て中に時短で働く女性」なんです。私自身も8歳と2歳の育児をしつつ、仕事をしています。
また、正社員の仕事を分割しパートタイムでの採用を主にしています。月間60~110時間、9時半~15時くらいまでの時短勤務で働く人が多く、行事や子どもの都合で柔軟にシフトを組み替えられるようにしていますね。事前申請で、子連れ出勤や、リモートワークも可能です。
また、早朝や夜間の対応はアウトソーシングしています。

どのような経緯で、現在の従業員体制や雇用形態を採用されたのでしょうか?

菅野
菅野

ルバートセミナー資料抜粋

谷平
谷平

はじめは弊社も、正社員スタッフ1~2名+業務委託(在宅)スタッフで運用していました。でも、正社員スタッフの監督域が広く業務量に疲弊したり、孤独感を理由に退職してしまうことがあり。それに加え、私自身の家事・育児との両立という課題もあって、既存の体制では時間的にもコスト的にも厳しいと悩んでいました。
そんなとき、再就職したいママたちと話していたら「やりがいのある仕事はしたいが、扶養内で働きたい」という人が結構いて。すごく驚きだったんです。

つまり、年収を意図的に抑えたいということですよね?

菅野
菅野
谷平
谷平

いまの日本では、扶養控除を受けられないと、中途半端に働いても損だと考える人が多いです。かといって長時間の労働と家庭の両立は困難ですし、支援制度や文化も整っていません。税金や労力を加味すると、扶養内で働くのが妥当と考える人も多いです。

「稼げなくていいので、なるべく働きたくない」層や「たくさん稼ぎたい、バリバリ働きたい」層ではなく、この「適度に稼ぎ、子育てに無理をかけ過ぎず働きたい」優秀な”パワーパート”に訴求できるようなテーマと雇用形態を掲げて、求人をすることにしました。

この”パワーパート”層が求めるのは、どんな職場なのでしょう?

菅野
菅野
谷平
谷平

これは、弊社がもっとも重視していることなんですが、「やりがい」×「働き方のバランス」が両立できる職場だと思うんです。特に、子育て中の女性だと労働可能な条件が限られてくるので、どちらかに偏っているか、どちらもない場合が多いんですよね。でも本当は、両方求めていい。これをサポートできるような、より多くの企業や社会の仕組みづくりが必要だと考えています。
ただ、その分高い時間対成果は求めます。

この層を採用して人数を増やすのはコストが増えるのではないかと懸念される企業もいますが、時短勤務のスタッフは本人の希望の働き方に合わせて社会保険加入は対応しますので、フルタイム勤務の正社員1人と時短勤務の3~4人のコストは、結果的にほぼ同等でした。人数確保もしやすくなることが周知されれば、企業側もより当事者に寄り添った仕組みづくりに積極的になれるかと思います。

子育て家庭だけでなく介護を理由に働けない層にもアプローチできそうですね。

菅野
菅野

女性たちよ、キャリアを中断するべきではない!

谷平さまご自身も、子育て中の女性の当事者として、働き方に悩まれた時期があったとか。当時、どのようなことを感じたか、お教えいただけますか?

菅野
菅野
谷平
谷平

私は、7年ほど人材業界でバリバリ働いていました。結婚を機に退職し、第一子の出産後にまた働きたいと思ってゆるくスタートしようとしたんですが、それはもう大変でした。
そこそこキャリアがあったのに、家事・育児をしながらでは条件が合わないし、やりたい仕事もなかなか見つけられなくて。前の職場は男女の差が本当になかったので、結婚・出産後にはじめて「家のことはすべて女がするのが当たり前」という文化的な圧力を感じたときは驚きでした。
それでも、早く新しい働き方を確立したいと思っていたので家事・育児をワンオペでこなしながら働いたんですが、待機児童を2年経験したことで、体力的にも精神的にも限界だったんですよね。
日本はライフイベントなどを機に制約ができた人材に厳しくて、当事者たちもそれを我慢してしまっている。このおかしな状況をとにかくなんとかしたくて、具体的な事業のビジョンが立つより先に、会社を興そうと決意したんです。

それは、本当に大変でしたね……。同じような状況だと、働きたい意思があっても「今は難しいから、落ち着いたらにしよう」と先延ばししてしまう人も多いのではと思います。それでも、谷平さまが早く働きたいと思ったのには何か理由がありますか?

菅野
菅野
谷平
谷平

「落ち着いたら」というのは、私の周りでも本当によく聞きますね。でも、”いつか働きたい”なら新しい一歩を踏み出すのはなるべく早い方が中長期ではプラスです。
こういう人は、責任感が強かったり、完璧主義だったり、自信がなかったりする人が多いのですが、先延ばしするほどブランクが長くなるので市場ではどんどん不利になることがあります。
すぐには、理想の仕事が見つからなかったとしても、何か始めることで本当に望むものが分かることがありますし、早い成長にも繋がります。自分が本当に納得できる選択肢とは何なのか中長期で考えることが大切です。
例えば本音では、 働くことに挑戦したいけれど、家族のために我慢をしているなら今すぐ動くべきです。たとえば、万が一、夫が事故や病気で働けなくなったとき、自分にキャリアがあれば幾分もましでしょう。子どもに手がかからなくなったとき、育児だけに打ち込んでいたら自分を見失わないですむという声が多いです。
結婚・出産しても「誰かのために自分を犠牲にする」必要はない時代。だから、 時間配分は子の成長に合わせてとはいえ、母ではなく個人としての自分も大切にしておきたいと感じてきました。

仕事は、経済的な側面のみならず、自己実現や自立などのメリットもある、と。目から鱗でした……!

菅野
菅野

“ジョブシェア”は、社員定着のカギ

さて、就労体制についての質問に戻りますが、時短勤務のスタッフをメインに切り替えたことで、実際どのような変化があったのでしょうか? 

菅野
菅野
谷平
谷平

フルタイム勤務でも回しきれていなかった業務を本当に回せるのか、私自身も不安を感じていました。そこで、試行錯誤しながら、稼働時間が少なくなったぶん時間対成果を上げる工夫は重ねました。

具体的には、どのようなことを?

菅野
菅野
谷平
谷平

業務内容は全て細かいレベルのタスクを可視化し、さらに属人化を避け、“ジョブシェア”を徹底したんです。
たとえば、取引先とのメールにはCCにプロジェクトメンバー全員を入れて、担当者以外も進行を把握できるようにしています。進行中のタスクは定例会議とITツールで管理して、資料は個人のフォルダではなく社内の共有サーバーに置くようにしました。
担当者の不在時にも、誰かがその代わりを担って助け合うので、業務が滞らないんです。
ジョブシェアは社内だけではなくて、早朝や深夜帯、出張などの業務は外注しています。時短の従業員が動けない時間を、むしろ働きやすいライフスタイルを持つ人たち――たとえば、男性も多いですが――に担ってもらったほうが、合理的です。

社内のコミュニケーションで、工夫していることはありますか?

菅野
菅野
谷平
谷平

社内のやり取りは、メールやFacebook、Lineをやめて、Chatwork(チャットワーク)を使っています。ここにはどんな些細なことも書きこむようにし、いちいち状況確認は不要、全員の情報レベルを揃えています。
プロジェクトごとにスレッドを立ち上げているので、履歴を見れば誰もが進捗を把握できますし、小さな疑問や状況を共有できるので、無駄な誤解や指示待ちが無くなりました。
この制度を取り入れたおかげで、弊社は結果的に従業員の満足度・定着率もかなりあげることができ成果の質も上がりました。

ルバート流、従業員育成

高い時間対成果を上げるためには、相応のスキルが必要ですよね。仕事にブランクがある女性が多いなか、どのような従業員育成を行っていますか?

菅野
菅野
谷平
谷平

スキルに自信がないと言う女性は、本当に多いです。
反対に、自分の相場観がない人も多いです。
社会人デビュー後、裁量権もほぼないうちに、結婚・出産などで退職し、しばらく働いていなかったという方でも、本人評価とは裏腹に、ポテンシャルは高い人も多いんです。
だから、はじめは丁寧にOJTを行って感覚を取り戻してもらい、チームでフォローしますし、ビジネスの基本スタンスや経営的な考え方もインプットするようにしています。
私自身も、月1で面談を行って本人の負担や課題を共有し、解決できるように尽力します。そして、弊社の考え方や仕事の仕方を理解できたと思えたら、どんどん裁量権を渡します。進捗は常に把握できているので、私が見ていて「これはさすがに違うぞ」となったらすぐに突っ込めますし、自分で考え判断する力は場数が必要。適切なフォローも必要。これがもっともスキルアップに効果的ですし、なにより重要な「やりがい」を感じてもらえるので。

なるほど! そういえば、貴社はどのように社員を評価しているのですか? 「やりがい」を感じるには、正しく評価されているという感覚も不可欠かと思います。

菅野
菅野
谷平
谷平

そうですね。弊社では、オリジナルの査定シートを利用しています。「判断力」「チーム協働」「主体性」「職務のスピードと質」など20の項目に対し、5段階で評価をつけています。
各業務の担当割合や目標、本人の実感などを話し合ったうえで、基準に沿ってつけた査定シートの評価を半年後に社員に共有します。パート入社で正社員に昇格した方もいます。
本人評価と、企業評価をすり合わせることが大切だと思うんです。半年ごとの査定や月1の面談でも、たとえば本人が頑張っているつもりでも、ここがこうなったらより会社としては評価できた、というように具体的な事例も入れて努力の方向性がずれないように意識しています。
単なる給与や賞与の増減のためではなく、査定は成長してもらうためのものなので。

(査定シートを見ながら)通知表のように項目が細やかですね! これで評価してもらえたら、なんだか嬉しいです。よくある企業の査定って、上司の主観やプロジェクトの運次第で、評価基準が曖昧なことも多いですもんね……。

菅野
菅野
谷平
谷平

仕事の演出だけがうまい人もいると思うんですけど、心証よりも実際の目標達成速度や貢献度で判断したいので、間違った評価をしないよう努力しています。
この評価に基づいた具体的で明確な話ができるので、スタッフの指導をする際にも有用です。

「パートなのに求められることが高すぎる」という人は文化が合わないでしょう。弊社が求めているのは雇用形態に固定概念をもたず稼働時間は最大限の成果を出す方です。実際に「働きやすいのにやりがいと裁量があり楽しく感謝している」と言ってくれる方が活躍しています。

なんとなく、「パート」には「誰にでもできる仕事」というような、少しネガティブな意味合いが含まれてしまっていますよね……。社内での呼称についてなど、何か意識されていることはありますか?

菅野
菅野
谷平
谷平

「パートのおばさん」みたいなイヤな表現で使われたりしますよね(笑)本来は就労形態の名称に過ぎないですし、業務内容も「パート」=「簡単なもの、責任がないもの」という概念ではなく、時間の自由がきくが、働いている時間は雇用形態に関わらず成果を出したいという仕事のスタンスの方を求めています。
意識の統一のためにも、社内や求人では「パートさん」と呼んだことはなく、“スタッフ”あるいは“従業員”という呼称で統一しています。
対社外の説明などでどうしても必要な時などは、就労形態の分かりやすい表現として用いることもありますが、なるべく避けるようにしています。

このほか、社内の士気を高めるために実施していることはあったりしますか?

菅野
菅野
谷平
谷平

シフトが全員揃う日が少ないので、月2回はスタッフ全員でミーティングをしています。
月1でおいしいお店をセッティングして、定例ランチもしますね。時短勤務だと、雑談の時間すら惜しいので、思いきって仕事とは関係ない場所で楽しく話せる時間を設けるようにしていて。
このほか、年2回「ファミリーデー」があります。子どもも一緒に、家族ぐるみでスタッフが交流できるイベントですね。前回は、収穫体験に行きました。チームからのコメントを感謝状にして渡したり、忘年会は時短家電など豪華な賞品でねぎらったりもしてます。

楽しそうですね! 仕事は仕事。でもきちんとメンバー間の結束が成り立つようにしていると感じます。

菅野
菅野

女性スタッフの強みと弱み

仕事をするうえで、子育て中の女性スタッフが大半であるがゆえの強みを感じることはありますか?

菅野
菅野
谷平
谷平

あくまで傾向ですが、細やかで柔らかいコミュニケーションが得意だったり、共感力が高い人は多いと思います。あとは皆、子育て中という同じ環境に置かれているので、互いに助け合おうとする感覚も強いです。ここが、ジョブシェアなどの弊社の働き方にうまくハマっていると感じますね。
もちろん、傾向としてあるだけですべての女性に当てはまるものではないですし、こういう働き方が得意な男性もいると思います。女性が多いゆえのネガティブな面もありますしね。

どのあたりがネガティブな面だと感じますか? 

菅野
菅野
谷平
谷平

要点の整理が苦手で、会話が脱線したり長くなったりしがちです。交渉したり要望するのが苦手な人が多い傾向かなと。女子グループにありがちな、言うべきことをはっきり言えない「馴れ合い」の集団にならないようにしようという話もしますね。
ビジネスの場なので。締めるところはきちんと締められように、定例会議や個人面談で意識をすり合わせています。
あくまで成果あっての働きやすさ。各人がその場でできることをこなしてもらっているんです。今はチームの雰囲気もとてもいいですね。

ルバートの目指す世界

貴社の企業命題は、どのようなものですか?

菅野
菅野
谷平
谷平

現在は我々も当事者ということもあって「子育て中の女性」に働きやすい環境に焦点を当てていますが、弊社の企業命題は『誰もがしなやかに変化し続けられる社会に』なんです。ですから、女性・男性関係なく、どんな状況に置かれた人もそれぞれが求める人生や働き方を追求できるようになるといいなと思っていて。介護や体調、人生観などさまざまな選択によって、現在は退職したり望まぬ状況に身を置く人が多いじゃないですか。いずれは、誰もが状況に合わせて働き方を選べる社会になればいいと思っているんです。

確かに、男女関係なくより自由な働き方が求められていますよね。その点でも貴社の就労体制は多くの企業にとって有用ではないかと思います。

菅野
菅野
谷平
谷平

実際に導入を検討される企業さまから相談を受けることもありますし、再現性のあるものだと思います。まるっきりこのままの形というのは難しいかもしれませんがカスタマイズは可能かと。
ジョブシェアや綿密なコミュニケーションは、ひとりよがりの人が混じってしまうと成立しなくなってしまいますし、仕組みや文化の整備にそれなりに手間はかかります。
けれど、働く人それぞれが求めることをこうやって社会に発信していくことで、企業がそれに応える土壌は少しずつできてきていると思います。

自分の変化がやがて日本を変える

貴社は、『ウーマンエンパワー』などで企業とのかかわりも多いですよね。実際のところ、女性の社会進出についてどのように考えている企業が多いですか?

菅野
菅野
谷平
谷平

正直なところ、男女ともにより働きやすい環境づくりを本気で推進している企業も、なんとなく流行に乗っている企業も、どちらもあると思います。でも、優秀な経営者ほど必要性を感じているように思いますね。なぜなら、働きやすい環境を整備することで、男女ともに優秀な人材を集めたり成果を出せる可能性が高まるからです。
たとえば『ウーマンエンパワー』に参画して「女性が働きやすい」PRをした企業は、男女ともに求人応募数がかなり増えたと聞きました。若い世代の男性は、育休が取れるかを重視する人もいるそうですし、女性に優しいなら男性にも優しい企業だろうと思われやすいんでしょうね。入り口はそういった「儲かる女性戦略」的な切り口であっても、企業に関心を持ってもらえるならいいと思います。

特に、男女平等という文脈の話では、男女のすれ違いやいがみ合いが起こることも多いように思います。どうすれば、互いを理解し合い、よい関係を築くことができると思われますか?

菅野
菅野
谷平
谷平

対立構造をつくってしまうこと自体が不毛ですよね。
ただ恋愛は別として(笑)、仕事の場で性別の話をするのが嫌いだった私から見ても、日本はかなりの後進国です。「男女平等」という概念も「女性を優遇しろ」という話では決してなくて、全ての人が努力に対する相応の成果を手にできる社会で日本の生産性を上げていこうという話なわけで。では、どうやって様々な違いがあるうえで、企業生産性を落とさず不平等を減らすかというと、家庭や企業の努力だけでは不十分で、国が制度をあげて解決すべきだと思っています。

政治的な改革こそが必要だと?

菅野
菅野
谷平
谷平

個人、民間でできることは始めるべきですが、たとえば、少子化が叫ばれるなか、子どもを持つ家庭ほど困窮・疲弊するのであれば子どもを産みたい人は減るに決まっています。扶養制度の条件や、幼稚園と保育園が分かれているのも合理的ではありませんし。
怒りの矛先を、見えるもの――たとえば、家族とか会社とか、異性とか――に向けがちですが、大事なのは社会構造を改善していくこと。
当事者が声を上げれば、理解が進み、危機感やメリットを感じれば企業や行政も動くでしょう。
東京都も再就職支援に力を入れ始めており、弊社も運営に関わっています。まずは、声をあげないといけない。だから私はこの会社を起業したんです。

我慢するのはやめて幸せの為に変化しよう

ソウルウェア代表の吉田氏はリモートワークを主体とし、18時には仕事を切り上げて奥様をサポートするために家事や育児なども積極的にこなしているそうです。こういった新たな仕事や家庭観を持つ男性も増えてきているような気がしますが、谷平さまの実感としてはどう感じることが多いでしょうか?

菅野
菅野
谷平
谷平

若い世代――特に平成生まれは「男だから/女だから」という意識がそこまで強くない人が多いように思いますね。上の世代も、吉田さまのように当たり前に受け入れている人も少なくないんですよ。まだ「昭和の価値観」を引きずっている人たちも実は悪気があるわけではなくて、古いOSをアップデートできていないだけ、という場合も結構あるんです。

新たな価値観を受け入れる人は、どうすれば増えていくと思いますか?

菅野
菅野
谷平
谷平

高度経済成長期は、女性が家事・育児で男性が仕事というシステムが効率的だっただけで、いまは女性も働かないと経済的にもライフスタイルとしても厳しい場合がほとんどですよね。
なのに、なぜか女性は家事・育児負担が変わらないまま働くのが当然のようになっていた。働き方が変わったのだから、家庭も変わらないといけないことに、誰もが薄々気づいてはきています。ただ、変化を受け入れるのは大変だし、特に男性はいまのシステムのほうが楽だと感じる人や変えたくても職場が変わらないとストレスが溜まっている人がいるのも事実でしょう。ただ理解し合うために発信し、議論していくことは大切だと感じます。

それは、家事・育児をしつつ仕事をする現状に不満を持つ女性たちにもいえること、ですね。

菅野
菅野
谷平
谷平

そうなんです! 女性たちも、我慢せずに声をあげるべきなんです。パートナーへの不満を抱える多くの人が、何も言わずに察してもらおうとするか諦めているケースの多いこと。気持ちは分かりますが、身近にいても所詮は他人なので、理解してもらうためには自分も努力しないといけないんですね。きちんと話し合ったらすんなり解決したというケースは、驚くほど多いです。

たとえ収入や労働時間に差があっても、家庭労働を多く担っていることにもし納得感がないのであればきちんと家族の将来のために話し合うべきでしょう。
私も、はじめは夫と喧嘩ばかりでしたが、それでも諦めずに話し合いを続けました。いまでは、夫自身が率先して仕事を早く切りあげ、家事や育児に取り組んでくれるようになりました。良い意味で、以前の生活とは雲泥の差がありますね。

言い合いになるのが恐い、あるいは面倒だと思ってしまう人も多そうです。
パートナーに自分の本音を伝えるための、コツのようなものはありますか?

菅野
菅野
谷平
谷平

これは、仕事と同じだと思うのですが、家族にとってのメリットを伝えたり、事実と感情をいったん切り離して論理的に話したほうが伝わりやすいのと、例えば家庭タスクと負担を可視化したり、なるべく細かく具体的にお願いすること、できれば裁量権をもたせ途中で口を出さない・自分のやり方を押し付けない、できた部分を褒めてやりがいを持ってもらうこと、などだと思っています。
そして、話し合いをするときは、パートナーを責めるのではなく文化や社会に問題があることを前提として、自分の罪悪感を捨てて腹を割って話すこと、だと思いますよ。

女性としての今後の働き方など、私自身、これまで捉われていた窮屈な常識を壊していただけた、嬉しい驚きのあるインタビューでした。
最後に、谷平さまと貴社の、今後の展望を教えてください。

菅野
菅野
谷平
谷平

いずれは仕事において性差ではなく、個人差で語られるのが当たり前の社会、様々な立場の人たちが、当たり前に企業に貢献できる社会になるといいなと思っています。そのために、弊社自身も実験台として模索を続けていますし、今後もできることから少しずつ活動の幅を広げていきます。

事業や従業員体制から「子育て中の女性に優しい」企業かと思いきや、「日本の悩めるすべての人」への熱い想いと冷静な視線、そして圧倒的な先進性を持つ企業でした。谷平さまの素晴らしい行動力に、自分自身も何かポジティブなアクションを起こしたいと思えるインタビューでした。
株式会社ルバートの、今後の活躍に注目です。

ソウルウェアが実施する「自由な働き方」の実態とその意外な反響

※この記事は「「何かを成し遂げる」必要なんてないソウルウェアが考える、令和時代の幸福な働き方」の続きです。:前記事を読む

―吉田さんの、一貫した”人”やその”魂”への想いが、「自由な働き方」を可能にしたのですね。 ただ、あまりに自由だと、企業として統制を取るのが難しくなるように思うのですが……。
代わりに社員に課しているノルマやルールなどはあるのでしょうか?

吉田:社員のことをきちんと見るようにはしていますが、ノルマやルールで社員を縛るのは意味がないと思うんです。
ソウルウェアの査定は、数字によるノルマの評価は行っていないんです。
エンジニアの査定では特に、単なる数字では計りにくいというのもありますし、そもそも、数字による評価には懐疑的なんです。
たとえば、売上計画における「伸び率」なんてものは、本質的にはギャンブルと変わらないと思うんですよ。達成するために努力することはできても、完全にコントロールすることはできません。
そんな数字やノルマに基づいての評価なんて、する方もされる方キツイと思うんです。
売上計画は立てますが、背伸びした「伸び率」を目標にすることも、それを達成するためのガムシャラな労働も求めません。目標を達成しなくても、誰かが責められるというようなこともありません。

また、変化に対応できるように、ルールは必要最低限に留めています。
もちろん、就業規則などの法律で義務付けられているものや、希望があったものは明文化することもありますが。その一つとして、社員から要望があったので、「FIND(見つける)」「FLEX(曲げる)」「CONNECT(つなぐ)」という3つの行動指針は示しました。

―具体的には、どのようなことでしょうか?

吉田:ソウルウェアでは、社員の自立・自律を尊重しているので、上から指示することはほぼありません。“その人自身が課題や解決法を見つける”(FIND)ことを期待しています。理に適っているならば、前例がなくても、常識からはずれていてもかまいませんし。

また、時代や環境によって、メインストリームや常識、ルールは変遷するものです。頑なに変化に抗えば、置いていかれるだけです。
もっとも重要なのは、”状況に合わせて、自分をしなやかに変化させる”(FLEX)ことだと思うのです。

そして、一人でできることには限界があるので、つながる(CONNECT)ことで”より大きなことを達成できる“ようになると思います。さまざまな人をつなぐには、オープンなコミュニケーションが不可欠だとは思いますが。
ちなみに、リモートワークを導入したきっかけは、社員の一人が田舎へ帰るために退職を申し出たことだったんですけど。
リモートワークという方法を見つけ(FIND)、働き方を変え(FLEX)たことで、引き続きつながる(CONNECT)ことができました。

―ここからは、ソウルウェアさんが導入されている働き方について、その実態や反響をお聞きしたいと思います。今では、都内に住む社員たちも、リモートワークを主にしているそうですね。

吉田:はい。多くの社員に、裁量労働や場外みなし時間労働制を採用して、遅刻、早退などの適用をなくすなど、できるだけ緩く運用しています。
そうしたことで、遠隔地にいる人のみならず、全員がオフィスに行く理由がなくなってきたんです。

それでも、宅配便の受け取りや掃除、備品の手配など、ほとんど誰もいないオフィスのためにやらねばならないことが多くあって。
だから、固定のオフィスをやめて、シェアオフィスを導入しました。
シェアオフィスなら自社社員がそれらの雑務を担わなくてすむし、必要なときは打合せや作業の場として使えるなどの利点が多くあったんです。
引っ越す際に、荷物もだいぶ捨てました。抱えているものが多ければ多いほど、今後の変化に対応することが難しくなると思うので。

―ソウルウェアでは、副業ならぬ「福業」を許可されているとお聞きしました。

はい。エンジニアを雇用する際、個人でも別の仕事を持っている人だったんですけど。「干渉しないので、そのまま続けて」というようなことを伝えたと思います。
とはいえ、副業をやみくもに推奨しているわけではありません。
最近は、副業の素晴らしさをはやし立てる記事もよく目にするんですが。兼業すると、どうしてもトータルの労働時間は長くなるじゃないですか。それによって、本人が辛くなったり、身体を壊したり、家族に皺寄せがいっているケースもよく見るんです。
副業によって、自らの人生をないがしろにしてしまうなら本末転倒だと思います。
だからソウルウェアでは、副業に「福業」という漢字を当てています。
幸”福”のための「福業」ができればいいという戒めと願いを込めているんです。

―さまざまな働き方を導入することで、社員たちから何らかの反響はありましたか?

吉田:実は、大きなリアクションはないです(笑)。
私も何らかの宣言をして導入するわけでもないので、社員たちは変化をゆるりと受け入れている感じです。
でも、会話の折にたとえば、「洗濯や宅配便の引き取りがしやすくなった」みたいに言われることは結構あって、嬉しくなりますね。
こういう小さな積み重ねが、生活の質の向上につながるんだと思います。それこそが、私の目指しているものなので。

逆に、ルールがほとんどないことに戸惑う社員は多いかもしれない。先ほどお話しした3つの行動指針でさえ、あまり具体的にはせずに抽象的な部分を残していますから。
それでも、ルールを作らないことにはメリットがあると思うので、別の方法でそういった社員たちを安心させられればと考えています。

―では、吉田さん自身の生活には何か変化はありましたか?

「自由な働き方」という意味では、たぶん私が一番勝手をさせてもらっています(笑)。

18時過ぎには退社したいので、飲み会にもあまり行きませんし、電話もメールもほぼシャットアウトしてしまいます。
企業の代表としてそれで大丈夫なの? と思われるかもしれませんが、徹底するうちに周りも理解してくれるんですよ。飲み会を16時くらいからにしてくれたり。
また、妻は休みがとりづらい職種なので、子どもの保育園の行事には私が積極的に参加しています。おかげで、家庭は円満だと思います。前職では4日連続徹夜勤務のようなこともやっていて、妻との関係も危機的状況だったんです。
家庭の心配事が減ったことで、仕事にもより集中できるようになったと思っています。

―「自由な働き方」を認めることで、さまざまなライフスタイルをもつ人員を採用できるなど、実は企業にとってもメリットが多いそうですが。実際に、他の企業からはどのようなリアクションを受けることが多いと感じますか?

吉田:まだまだ否定的なところが多いですよね。

たとえばリモートワークだと「社員の動向が掴みづらい」のがデメリットだと言われるんですけど。どんな働き方をしていても、サボる人はサボるんですよ。きちんとコミュニケーションを取ったうえで、結局のところは、アウトプットで計るしかないんだと思います。

対面でなければ、きちんとコミュニケーションが取れないというのは、前時代的な思い込み、あるいは怠慢によるものだと思います。現代はさまざまなコミュニケーションツールが発達しているので。
セキュリティ関連の不安もよく聞きます。でも、システム側で権限をきちんと決めて、許可された人が許可された操作しかできないなどの対応を徹底すれば、大きな問題が起きることはありません。

「100%のアウトプットを出せる社員がいるとして、実は勤務時間の8割しか働いていない」としたとき、「残りの2割も働かせて、120%のアウトプットを引き出したい」と考える企業が多いでしょう。
でも、私はそう思いません。100%もアウトプットしているのなら十分じゃないですか。働く時間を増やしたり、拘束を強めることで、アウトプットが高まるとは限りません。
それを求めるのは傲慢ですし、120%出してもらわないと会社が回らないのであれば、経営の怠慢だと思います。

―最後に、吉田さんが今後ソウルウェアを通して実現していきたいことは何でしょうか?

ソウルウェアはIT企業として、「業務の生産性を上げる」製品を作っています。
「業務の生産性が上がったら、余った時間でさらに生産し、売上を増やす」というのが、これまでの当たり前の考え方でした。
でも本当は、余った時間で何をしてもいいんです。のんびりしてもいいし、家族と過ごしてもいいし。もちろん、その人が望むならさらに生産し、売上増に貢献するのもいいですし。

私たちはみんな異なる人間で、それぞれの「魂」が目指すところは違うはずです。それなのに、同じ方向を見ることばかりを強いられてしまっています。 働き方についても、「何かを成し遂げる」ことが重要であり、そのために人生を仕事に捧げることが至上とされていました。退職したり、肌に合わなかったり、結果を出せなければ、それだけで「幸福ではない」というレッテルを貼られることすらありました。でも、それはおかしなことだと思います。

令和の今、多様なライフスタイルや価値観が生まれ、認められはじめています。
これからはより自由な働き方が認められるようになって、多くの人が「魂」を満たせるような幸福な人生を送ることができればいいと思っています。 そのための小さな一歩を、今後も柔軟に変化し続けることで実現していきたいと思います。

これまであまり、ソウルウェアや働き方に関する想いを積極的に発信してこなかったという吉田氏。しかしながら、インタビュアー自身が、自分が働き方についての固定観念に捉われていたことに気づき、何度もはっとする場面がありました。
働き方に正解なんてなく、それぞれが「幸福だ」と思える選択ができるようになることで、救われる人はたくさんいると思います。
「全ての働く人」にあたたかく寄り添い、そしてときには問いを投げかける。そんな記事を、「エス弁」は発信していきます!

「何かを成し遂げる」必要なんてない。ソウルウェア流、令和時代の幸福な働き方

ソウルウェア代表 吉田 超夫(ヨシダ ノリオ)氏

株式会社ソウルウェアでは、「リモートワーク」「『福業』の許可」「オフィスを持たない」など、さまざまな「新しい働き方」を導入しています。
本記事では、代表・吉田超夫氏へのインタビューを通じ、ソウルウェアという会社に込めた想いと、吉田氏が考える「令和時代の働き方」についてお聞きしました。

―勤怠管理・交通費精算クラウド「kincone」(キンコン)の開発・提供など、ITの分野で大きく成長を遂げているソウルウェアですが、どのような経緯で立ち上げられたのでしょうか?

吉田:私はEC(電子商取引)業界のある企業に勤めていたのですが、働き方が合わず一年足らずで退職したんです。
そのときの後輩にあたるNが、のちにサイボウズ株式会社「kintone」(キントーン※1)の営業担当になったんですね。
それで、世に出たばかりだった「kintone」の新規ユーザー向けに、開発エンジニアを探していたそうで。私に声をかけてくれたんです。
「kintone」の受託開発がきっかけで、そこから「kincone」(※2)のような、シンプルで使いやすく、業務の無駄を削減することに重点を置いたサービスの独自開発を行うようになったんです。

私は父親の会社が倒産したこともあって、起業に積極的だったわけではないんです。
でも、転職を繰り返したことで会社勤めが合わないかもと思っていましたし、身体を壊すような辛い仕事も多かったので、とにかく環境を変えたいという気持ちが大きかったです。 だから、経営者のイメージにあるような、ガツガツ稼いだり、注目されたり、業界を変えたい!というような前のめりな思考は、起業以来ずっとないですね。

※1:サイボウズ株式会社が提供する、各企業が自社業務に合わせたシステムを簡単に作成できるクラウドサービス。
※2:株式会社ソウルウェアが提供する勤怠管理・交通費精算クラウド。

―さまざまな「自由な働き方」を導入していますが、創業時からそのようなスタイルでしたか?

吉田:実は、当時はそんな余裕はなかったというのが正直なところです。
「kintone」の受託開発は弊社ともう一社ほどしか請け負える実績がなかったこともあり、仕事は無限にあったんです。
特に、「kintone」のようなユーザビリティが高いものは、その分開発者に求められることが多いエンジニア泣かせなサービスでしたし(笑)。だから、休日出勤や泊まり込みで働くこともあったんです。今では考えられないですが。
ただ、社員にとって働きやすい会社にしたいというのはずっと考えていて、必ず実現させたいと思っていたことです。

―では、どのようなきっかけから、現在のような働き方になったのでしょうか。

吉田:一緒に働いている社員から要望や相談を受け、必要な変化だと感じたからですね。ソウルウェアでは、「人」の想い――いわば、「魂」と呼べるものを、大切したいと思っているんです。
また、私自身がルールにこだわる人間ではないんです。要望や相談が理に適っていて解決可能ならば、どんなことでも試してみたいと思っています。

―その「『魂』を大切にしたい」という想いが、社名の由来だったりしますか?

吉田:社名の「ソウルウェア」は、『ピープルウェア』(※3)という書籍が直接の由来なんですけど。
そこには「(テクニカルな要因をのぞいて)システム開発の成功はプロジェクトメンバーやユーザーなどの『人』にかかっている」と書かれていて。すごく共感したんですね。
そのうえで、私はその「人」の中の想い――「魂」が重要だと感じたんです。
「良いものを作るために『魂』を込めて、仕事に取り組む『人』は世の中にどのくらいいるんだろう?」と思うんですよ。良いものであろうとなかろうと、エンジニアの仕事は「システムを作ること」じゃないですか。
それでも、ソウルウェアでは企業側の工夫や努力によって、より多くの「人」が「『魂』を込めて良いものを作りたいと思えるようにしたいと思ったんです。

※3『ピープルウェア Peopleware: Productive Projects and Teams 』 著:トム・デマルコ、ティモシー・リスター

―熱い想いですね。企業ミッションでも、「魂のあるIT技術で社会に魂を取り戻す」を挙げていらっしゃいましたね。

吉田:実は、以前は「ITに魂を」というコピーだったんです。
現在のものにしたのは、近しい関係にあるIT企業が『楽しいは正義』『まとまると強い』『GO GLOBAL』などのコピーを打ち出したのがきっかけです。もちろん、それぞれ素晴らしいものだとは思うんですが。
でも、「事業を拡大させ、日本社会や世界に貢献する」というような耳ざわりのよいものは、私が思う企業のミッションとは、大きく乖離していたんです。

―どのような点で、ほかのIT企業が目指すミッションとの違いを感じましたか?

吉田:ソウルウェアは、起業当時から上場や大幅な拡大を目指していません。売上増より十分な利益の確保を優先しているんです。

たとえば、事業を拡大させるためさまざまな企業にアプローチするのは、一般的には推奨されると思います。でも、私はそうは思いません。 成功して売上が増えたとしても、社員にかかった労力を考慮するなら、その利益は高くないことが多いと思うからです。まして、生活や自身の幸せを犠牲にして、仕事に取り組んでいるなら、もってのほかです。

多くの人は、「何かを成し遂げねばならない」という圧力に流されて、本当に重要なものをないがしろにしてしまうように思うんです。「魂」を込めるどころか「魂」を削ってまで、本当に「何かを成し遂げねばならない」のでしょうか?
「社会」と聞くと、日本社会や世界といった抽象的なものを思い浮かべる人が多いかもしれません。でも、本当に重要な社会は、友人や家族、そして何より自分自身というような「目の届く範囲」にあるものだと思うのです。
抽象的な社会や会社に身を捧げることを、無意識に強いるような「企業ファースト」なミッションは、避けたいと思ったんです。

―IT業界以外でも、「企業ファースト」な理念を掲げている企業は多いですよね。吉田さんのような考え方が、もっと浸透してほしいと思う人たちは多いと思います。 企業側の受け取り方は、また違うかもしれませんが……。

吉田:やっぱり、周りにはあまり刺さらなかったみたいです。でも、海外ではこういう考えの会社も多いんですよ。たとえば、BASECAMP (※4)という会社は「Calm(穏やかさ)」を企業理念にして、成功していますよね。
知名度を上げることや事業を拡大することが、企業にとって最優先の課題であるとは思いません。『ピープルウェア』にあるように「人」が企業にとって重要であるなら、企業も「人」のことを尊重すべきだと思うのです。

※4:WEBアプリケーション開発フレームワーク『Ruby on Rails』を生み出した企業

”福業”座談会〜名嘉あづさ×林先生×ノンビン〜vol.2

前回は、なぜ福業を始めることになったのか?福業を息抜きや趣味だけで終わらせず、「会社」として動かしている理由は?などをお話してもらいました。
今回は福業って実際ハード?本業からどうやって理解を得たの?など、より気になる部分を本音トーク!
3名のゲスト紹介と、vol.1の様子はこちら。

ライスワークは辛い?福業なら幸せ?

名嘉
名嘉

私はずっと疑問に感じていることがあるんですが、ライスワーク(所謂、生活のための仕事)と福業(ライフワーク)は分かれるものでしょうか?
ライスワークがあるから、福業できるのか?福業だけで生きていけないのかな?と思うんですが。

こんなこと言っていいのかな(笑)僕は、生きてるというか「生かしてもらってる」って思ってて。
そもそも今ジョイゾーで、かつて自分が衝撃を受けたkintoneの開発に携われていて、しかも新潟に家族と暮らしながらリモートワークでそれができていて。だからエンジニアとしてもすごく楽しい、”福業”だと思っているんです。楽しいことが仕事になっているから。
ただ、SIの会社なので缶蹴りは仕事にできないから(笑)ノンビンビーンをやっている。

ノンビン
ノンビン

ジョイゾーの給料は奥さんだけが知る口座に入るので、実は僕は自分の給料を知らないんです。お小遣いの上限でしか、わからない(笑)
自分は楽しく働いてるだけで、お金は家族がうまくやりくりしてくれていて。だから生きるために働いてるっていうのと自分は結びつかないですね。

名嘉
名嘉

そっか。ジョイゾーではできないことをノンビンビーンでやってる。いろんなところで場を持つというか、軸ごとの顔を持つと思えばいいんですね。
ライスワークと表現すると、生きるためにやるような感じになってしまうけど。

結果的には、生きる為には働かないといけないんでライスワークみたいな要素もあるのかもしれないけど。

私も、大塚商会の業務も、はやし総合支援事務所の業務も、ライスワークだと意識はしていない。どんな仕事にも楽しさはあると思うんです。それを見出せないと「生きるために働いてる」だけになってしまう。
例えば、社労士の書類作成って普通に考えたら楽しくないんだけど(笑)うちの場合はクラウド事務所なので書類も電子。今まで紙だったものを、電子化するにはどうするのか?って仕組みを考えるフェーズをみんな楽しんでやっています。

林先生
林先生
名嘉
名嘉

なるほど。どんな仕事も、今自分は何が楽しくてやっているのか?と刻み込むように見ていく必要がありますね。
楽しいを見つけるアンテナはどうやって磨けるんですか?

どうせ同じ時間を過ごすなら楽しい方がいいな、とは常に思ってますけどね〜

林先生
林先生

2つの視点を持っていて。
誰もやってないものを見つけたい、という視点と
日々を過ごす中で「過去に戻れたらどうする?」とは考えない視点。今に100%を注いでいく。

ノンビン
ノンビン
名嘉
名嘉

常に今に全力なんですね。

ハードワークはどう乗り切る?

名嘉
名嘉

とはいえ、いくら楽しいとか好きなことでも、実際ハードワークなのでは?と思うんですが。
私自身、今いろんなやりたいこともあってどんどん手をあげて参加してたらスケジュールがパンパンになってしまっていて(笑)

(二人同時)
言われてみれば確かにハードかも・・・?(笑)

でも僕は、営業時間を設けたんです。
平日昼間はジョイゾーで仕事する。
一度家族とご飯を食べたり、お風呂に子どもを入れたり寝かしつけをして、その後の21:00〜2:00までがノンビンビーンの時間。プラス土日は、イベントがあれば時間を使ったりなど。
ノンビンビーンでは、「平日の昼間に働かない社長になろう」と思ったんです。

ノンビン
ノンビン

僕は朝5:00に起きて、大塚商会での始業開始までは自分の仕事の時間。
量やスケジュールで判断するとハードになるかもしれないけど、モチベーションは辛くないんですけね。

林先生
林先生

辛くはないけど、たまに気づくと寝てる時はありますよ(笑)そんな時は「もう今日はやめよ」と思ってやめる時もあります。

ノンビン
ノンビン

月に一回夫婦で温泉旅行にいくんですけど、宿の部屋で思わずパソコンで自分の仕事しちゃう時もあったり。奥さんも税理士の勉強してたりして(笑)

林先生
林先生
名嘉
名嘉

え〜!それが私はまだ出来なくて。以前、ハワイ旅行にプライベートで行った時に仕事のSlack通知が止まらなくて、気になって遊びの合間に確認する、みたいなことがあったんです。ハワイに遊びに行ったはずなのに、すごい疲れて帰った思い出があります(笑)

マルチワークやる上で絶対必要なスキルとしては、「〜〜しながら〜〜する」みたいなことができるようになることですかね。1つのことだけに集中しないとできない!という状態だと、こういう生活は難しいかも。
でもそれってすごい難しいことではなくて、テレビ見ながらご飯食べてるような感じで、実はみんなできることだと思うんです。

ノンビン
ノンビン

ある日突然できる、というより、自然に身についていくことなのでまずはやってみるのがいいかもしれません。

林先生
林先生

本業と福業の付き合い方。リモートワークや自由な就業は絶対必要か?

名嘉
名嘉

限られた時間の中で両立していくためには本業である程度自由に働ける、柔軟に時間をコントロールできるというのが条件かなと思うんですが。
その中でもリモートワークは条件として重要ですか?

僕は本業の大塚商会での時間は、基本的に自分の仕事は出来ません。
でも、はやし総合支援事務所のお客さん対応もある、やらなくてはいけない処理もある、と必要に迫られて自分の会社の方をどこにいても仕事ができるような「クラウド型の事務所にした」という感じですかね。

林先生
林先生

ジョイゾーは自由度が高いですね。でもこうやって僕がノンビンビーンを自由に出来ているのって、ジョイゾー側の理解と覚悟があって。というのも従業員を縛ることなく働かせてくれるってある意味絶対の信頼だと思うんです。

ノンビン
ノンビン

リモートワークって働く人にメリットがあるような言われ方をよく見かけるんですけど、実際は管理側のメリットも大きいんじゃないかと思っていて。例えば今まで10人の仕事をつきっきりでチェックしていた時間が削減できるとか。
そのメリットを理解してリモートを導入してくれる人は、アウトプットのチェックポイントをきちんと設けて、作る過程までは細かく見ないし、しの分離れたところからのコミュニケーションもきちんと取ってくれる。

林先生ははやし総合支援事務所で、管理者としてそれをやってる訳じゃないですか。
相当な覚悟と理解を持って、クラウド型の事務所という形を作られてるんだなぁと思いますね。

ノンビン
ノンビン
名嘉
名嘉

リモートワークって両輪があって、働く側も管理側も双方に覚悟や目的があるんですね。

そんな中で、本職によっては、どうしても会社が変わってくれないと福業出来ない人もいっぱいいるだろうなと思うんですが。

僕なんかは、本職の大塚商会はかなりやりづらい方だと思います(笑)
でもバス停を1ミリずつ動かしていくような、地道な努力を重ねて。
自然と「そういえば林さんこれ詳しいですよね?」ってみんなが声かけてくれるようになって。

林先生
林先生

副業するとその瞬間、絶対自分にしかわからない世界が出来上がるんです、周りの人からは見えない・わからない世界が。知られていないことは、評価もしてもらえないし。
始めた当初は孤独に感じるかもしれない。
でも徐々に人間て慣れるんで(笑)最初は、例えば「福業のために週に1日休みもらいます」と言い出した自分に驚いていた周りも、だんだんそれが当たり前になっていくし。

名嘉
名嘉

”会社を変える”と言うと、上司の説得や、会社自体の制度を変えるような、すごく大変なことを想像してしまいがちですけど。まずは小さなことから始めていつの間にか圧倒的な存在になっているのがいいのかもしれない。社内のポジションで兼業(福業)してみるとか。
だんだん、会社にも福業によって利益がもたらされるようになるとか。

僕も大塚商会の中ではエンジニアなのに、社労士業務の相談されたりします。そう言う時は「別料金だよ?(笑)」みたいな。

林先生
林先生
名嘉
名嘉

あはは(笑)でもそれ大事だと思っていて。全部イエスと言って便利屋みたいになると違うかなと。そうやって自分を確立していくというか。

”働き方改革”って今たくさん言われてますけど、歪んだ伝わり方をしているなと思っていて。
ただリモートワークすればいいとか、そういう話じゃないと思うんですよ。
「リモートワークができるからこの会社に入ろう!」となるのは、本当は違う。どんな会社でも働き方の選択肢がたくさんある状態が本当は働き方改革なんじゃないかなって。

ノンビン
ノンビン

自分がやりたいことが実現できる、魅力的な会社に入った時に「あなたはどんな働き方がいいですか?9ー17時がいいですか?リモートがいいですか?お給料がいっぱい欲しいから残業プランがいいですか?」みたいな(笑)
人によって合ってる働き方は違うから。選択肢が多い会社という意味ではジョイゾーは比較的多いかもしれないですね。

名嘉
名嘉

いいですね。選択肢が多いと、結局選ぶ方も自分の働き方についてよく考えるようになりますよね。自分で考える時間が増える。

なぜその生き方を選択したのか?

名嘉
名嘉

お二人は、今の考え方や働き方になった転機は何かあるんですか?

僕は小さい頃から嫌われ者だったんです。
落ち着きがなくて、周りがハラハラびっくりしちゃうような。よく怒られてたから、大人になるにつれて人に怒られないようにすごく顔色を伺うようになっていて。

ノンビン
ノンビン

社会人になっても、周りの顔色を伺いながらたくさん働いて、残業して。ある日、無茶な注文を受けた取引先で「星野くんは出世するよ!」と褒められたんです。その時に、「俺はあと40年先までこうやって生きてかなきゃいけないのか?」と思った。
それからですね、どうせ嫌われるなら、顔色伺って自分に無理してストレスためるより、好きなことやって怒られて嫌われる方がいいんじゃないかって。
好き勝手するには、やることやってそれなりに結果出さなきゃいけない。そう思ったら色々頑張れるようになったし、自分が楽しいことやっていきたいと思いました。

名嘉
名嘉

「右向け右」からいかに外れるかってすごく大事。勇気を出して自分の好きなことをやる道に進むというか。

私の場合は、大学を卒業してからずーっと大塚商会で働いてます。15年くらい。
でも在籍していながらも、「企業で働く」って全然自分に合っていないような気がしていて(笑)学生の頃からあんまりそういうビジョンもなくて、とりあえず社会に出て働いてみるか、というくらいで入ってそのまま今も働けているというか。
電車乗ってみんな同じことして、すごくない?って思ってたんですよね。
人生一度きりだから、自分が好きなことやりたいってそもそも思ってたタイプなのかもしれないですね。

林先生
林先生
名嘉
名嘉

すごい。私自身は前の会社で風土改革とかをやるようになって色んな働き方を知ったのをきっかけに疑問を持ち始めて。30才くらいで疑問を持ったんです。当たり前を疑うというか。

ふと思ったんですけど、それならなぜ、林さんはずっと本業の大塚商会で働き続けているんでしょうか?

そうなんですよ、確かに。色んな人から言われたりします(笑)
正直、収入面では困ってはいないんです、本業がなくなったとしても十分に福業の方で食べていけるくらい事業として成長しているので。
でも大塚商会での仕事も楽しいんです。もはやエンジニア業務だけじゃなくて、イベントで登壇したり新規事業立ち上げたり色んなことやらせてもらっているので。
他にこんな風に社内で働いてる人いないんです。いないから、辞められていないのもあるんです(笑)


まぁあとは相乗効果も生まれていますね。大塚のお客さんが私の顧問先になっていたり。

林先生
林先生
名嘉
名嘉

看板を借り合ったりしている感じなんですね。企業と個人の新しい形ですね。

これから”福業”を始めたい人へ。

名嘉
名嘉

では最後に。「福業したい、やりたいけど行動出来ない」という人の背中を押して欲しいと思います。
正直、今日のお話を聞いていても、最低限の収入の確保、会社や家族の理解など踏むステップが多くハードルが高いなぁとも感じるのですが。

うーん、ハードルが高いかぁ。
何かすごいことを想像しちゃってるのかなって僕は思います。あまりにもハイスコアな目標を考えているのでは?僕はドラム缶を売ってるだけなんです(笑)
会社作って従業員雇って・・・なんて考えなくていいと思います。自分がやりたいことを整理して、チェックポイントを作り、その最初の1つから取り組めば。どんな小さなことでもいいんです。
家族や会社の理解も最初からはいらないんです、やってるうちに必要なフェーズが出てくる。

ノンビン
ノンビン

まずは一歩踏み出そう、なんですけど、準備せずにいきなり一歩を踏み出したわけじゃない。1つ1つ整えていけば絶対に現状は変わります。逆に言えば100個も200個も課題があるわけじゃない。1年は365日あるから1日1個クリアするだけでかなり世界が変わると思いますよ。

林先生
林先生

福業によって少しずつ、自分らしい生き方や幸せへの道を見つけた3名。
”複数の顔を持つって大変そう。やってみたいけど自分には無理。”
そう感じている方の背中をそっと押してくれる座談会になりました。
自分らしい働き方は、たくさんあります。あくまでその中の1つの選択肢として、”福業”について理解を深めてみてもいいのかもしれません。
”福業”を実践する3名をもっと知りたい方はこちら。

各インタビュー記事

【名嘉あづさ氏「大企業を辞めてスタートアップを選んだ理由」】
【コミュニティマネージャー】大企業を辞めてスタートアップを選んだ理由|名嘉あ…

【林雄次 氏の資格取得インタビュー&「脱Excel」ITメディア寄稿】
はやし総合支援事務所|ファンを増やすインタビュー【Fanterview】

3ステップで「脱Excel」誰でもマネできるkintone活用術〜業務アプリを最短距離で作…

【東京都社会保険労務士会(林雄次 プロフィール)】
会員情報 | 東京都社会保険労務士会

【星野智久(ノンビン)氏  note ノンビンビーンができるまでの記録】
note ――つくる、つながる、とどける。

【各インタビュー記事】
熱い漢。新潟のkintoneエバンジェリスト紹介

kintoneを誰でも簡単に使えるようにhackする ジョイゾー星野智久氏がフィールド入…

生き方のお弁当に、
たくさんの幸せを詰めよう

「お弁当」と聞いてあなたが想像するのはどんなものですか?

家庭によって、容れ物も中身も違うお弁当。
お母さんお父さん、おばあちゃんの手作り。
コンビニで買ったパンやおにぎり、
出来合いのお惣菜詰め合わせ。

その思い出は常に温かいものではなく、
人によっては悲しいものかもしれない。

すごく個人的で、多様。そして正解がないもの。それがお弁当です。

働くということ。

会社勤めの人
職人
命をかけて国や人を守る人
専業主婦(主夫)

給料や内容、楽しさ・やりがいだけでは測れないもの。
そしてやっぱり、
すごく個人的で正解がないところがお弁当と似ています。

友達のお弁当を覗いた時やおかずを交換した時の新しい発見も楽しい。 これは仕事上のアイデアや意見交換とも通じていますね。

みんなで食べるのか、一人で食べるのか。
そのロケーションは?

そういうお弁当の幅広さ・奥深さと
人それぞれ違う「働くこと」
「幸せの捉え方」の気持ちを重ねて、
多種多様な表現ができるメディア、それがエス弁です。

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