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「何かを成し遂げる」必要なんてない。ソウルウェア流、令和時代の幸福な働き方

ソウルウェア代表 吉田 超夫(ヨシダ ノリオ)氏

株式会社ソウルウェアでは、「リモートワーク」「『福業』の許可」「オフィスを持たない」など、さまざまな「新しい働き方」を導入しています。
本記事では、代表・吉田超夫氏へのインタビューを通じ、ソウルウェアという会社に込めた想いと、吉田氏が考える「令和時代の働き方」についてお聞きしました。

―勤怠管理・交通費精算クラウド「kincone」(キンコン)の開発・提供など、ITの分野で大きく成長を遂げているソウルウェアですが、どのような経緯で立ち上げられたのでしょうか?

吉田:私はEC(電子商取引)業界のある企業に勤めていたのですが、働き方が合わず一年足らずで退職したんです。
そのときの後輩にあたるNが、のちにサイボウズ株式会社「kintone」(キントーン※1)の営業担当になったんですね。
それで、世に出たばかりだった「kintone」の新規ユーザー向けに、開発エンジニアを探していたそうで。私に声をかけてくれたんです。
「kintone」の受託開発がきっかけで、そこから「kincone」(※2)のような、シンプルで使いやすく、業務の無駄を削減することに重点を置いたサービスの独自開発を行うようになったんです。

私は父親の会社が倒産したこともあって、起業に積極的だったわけではないんです。
でも、転職を繰り返したことで会社勤めが合わないかもと思っていましたし、身体を壊すような辛い仕事も多かったので、とにかく環境を変えたいという気持ちが大きかったです。 だから、経営者のイメージにあるような、ガツガツ稼いだり、注目されたり、業界を変えたい!というような前のめりな思考は、起業以来ずっとないですね。

※1:サイボウズ株式会社が提供する、各企業が自社業務に合わせたシステムを簡単に作成できるクラウドサービス。
※2:株式会社ソウルウェアが提供する勤怠管理・交通費精算クラウド。

―さまざまな「自由な働き方」を導入していますが、創業時からそのようなスタイルでしたか?

吉田:実は、当時はそんな余裕はなかったというのが正直なところです。
「kintone」の受託開発は弊社ともう一社ほどしか請け負える実績がなかったこともあり、仕事は無限にあったんです。
特に、「kintone」のようなユーザビリティが高いものは、その分開発者に求められることが多いエンジニア泣かせなサービスでしたし(笑)。だから、休日出勤や泊まり込みで働くこともあったんです。今では考えられないですが。
ただ、社員にとって働きやすい会社にしたいというのはずっと考えていて、必ず実現させたいと思っていたことです。

―では、どのようなきっかけから、現在のような働き方になったのでしょうか。

吉田:一緒に働いている社員から要望や相談を受け、必要な変化だと感じたからですね。ソウルウェアでは、「人」の想い――いわば、「魂」と呼べるものを、大切したいと思っているんです。
また、私自身がルールにこだわる人間ではないんです。要望や相談が理に適っていて解決可能ならば、どんなことでも試してみたいと思っています。

―その「『魂』を大切にしたい」という想いが、社名の由来だったりしますか?

吉田:社名の「ソウルウェア」は、ピープルウェア』(※3)という書籍が直接の由来なんですけど。
そこには(テクニカルな要因をのぞいて)システム開発の成功はプロジェクトメンバーやユーザーなどの『人』にかかっている」と書かれていて。すごく共感したんですね。
そのうえで、私はその「人」の中の想い――「魂」が重要だと感じたんです。
「良いものを作るために『魂』を込めて、仕事に取り組む『人』は世の中にどのくらいいるんだろう?」と思うんですよ。良いものであろうとなかろうと、エンジニアの仕事は「システムを作ること」じゃないですか。
それでも、ソウルウェアでは企業側の工夫や努力によって、より多くの「人」が「『魂』を込めて良いものを作りたいと思えるようにしたいと思ったんです。

※3『ピープルウェア Peopleware: Productive Projects and Teams 』 著:トム・デマルコ、ティモシー・リスター

―熱い想いですね。企業ミッションでも、「魂のあるIT技術で社会に魂を取り戻す」を挙げていらっしゃいましたね。

吉田:実は、以前は「ITに魂を」というコピーだったんです。
現在のものにしたのは、近しい関係にあるIT企業が『楽しいは正義』『まとまると強い』『GO GLOBAL』などのコピーを打ち出したのがきっかけです。もちろん、それぞれ素晴らしいものだとは思うんですが。
でも、「事業を拡大させ、日本社会や世界に貢献する」というような耳ざわりのよいものは、私が思う企業のミッションとは、大きく乖離していたんです。

―どのような点で、ほかのIT企業が目指すミッションとの違いを感じましたか?

吉田:ソウルウェアは、起業当時から上場や大幅な拡大を目指していません。売上増より十分な利益の確保を優先しているんです。

たとえば、事業を拡大させるためさまざまな企業にアプローチするのは、一般的には推奨されると思います。でも、私はそうは思いません。 成功して売上が増えたとしても、社員にかかった労力を考慮するなら、その利益は高くないことが多いと思うからです。まして、生活や自身の幸せを犠牲にして、仕事に取り組んでいるなら、もってのほかです。

多くの人は、「何かを成し遂げねばならない」という圧力に流されて、本当に重要なものをないがしろにしてしまうように思うんです。「魂」を込めるどころか「魂」を削ってまで、本当に「何かを成し遂げねばならない」のでしょうか?
「社会」と聞くと、日本社会や世界といった抽象的なものを思い浮かべる人が多いかもしれません。でも、本当に重要な社会は、友人や家族、そして何より自分自身というような「目の届く範囲」にあるものだと思うのです。
抽象的な社会や会社に身を捧げることを、無意識に強いるような「企業ファースト」なミッションは、避けたいと思ったんです。

―IT業界以外でも、「企業ファースト」な理念を掲げている企業は多いですよね。吉田さんのような考え方が、もっと浸透してほしいと思う人たちは多いと思います。 企業側の受け取り方は、また違うかもしれませんが……。

吉田:やっぱり、周りにはあまり刺さらなかったみたいです。でも、海外ではこういう考えの会社も多いんですよ。たとえば、BASECAMP (※4)という会社は「Calm(穏やかさ)」を企業理念にして、成功していますよね。
知名度を上げることや事業を拡大することが、企業にとって最優先の課題であるとは思いません。『ピープルウェア』にあるように「人」が企業にとって重要であるなら、企業も「人」のことを尊重すべきだと思うのです。

※4:WEBアプリケーション開発フレームワーク『Ruby on Rails』を生み出した企業

編集者

菅野 玲

菅野 玲

お寺在住のライター・編集者。本と映画と旅、美味しいものを愛しています。どんな日でも明日がほんの少し楽しみになる、そんな記事を発信していきます。

生き方のお弁当に、
たくさんの幸せを詰めよう

「お弁当」と聞いてあなたが想像するのはどんなものですか?

家庭によって、容れ物も中身も違うお弁当。
お母さんお父さん、おばあちゃんの手作り。
コンビニで買ったパンやおにぎり、
出来合いのお惣菜詰め合わせ。

その思い出は常に温かいものではなく、
人によっては悲しいものかもしれない。

すごく個人的で、多様。そして正解がないもの。それがお弁当です。

働くということ。

会社勤めの人
職人
命をかけて国や人を守る人
専業主婦(主夫)

給料や内容、楽しさ・やりがいだけでは測れないもの。
そしてやっぱり、
すごく個人的で正解がないところがお弁当と似ています。

友達のお弁当を覗いた時やおかずを交換した時の新しい発見も楽しい。 これは仕事上のアイデアや意見交換とも通じていますね。

みんなで食べるのか、一人で食べるのか。
そのロケーションは?

そういうお弁当の幅広さ・奥深さと
人それぞれ違う「働くこと」
「幸せの捉え方」の気持ちを重ねて、
多種多様な表現ができるメディア、それがエス弁です。

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